2005.09.27 Tuesday
「婉という女・正妻」
この話、年代によって面白い面白くないが分かれると思いました。
推奨は25歳以上くらいでヨロシク。
江戸時代土佐藩で活躍した政治家野中兼山は、あまりにも苛烈な政治を行ったため周囲から糾弾され、自身の持病も重なって政界から追い出されるような形でしりぞきます。
彼の死後、ライバル政治家達が兼山をおそれ、直系が途絶えるまで一族を幽閉するという沙汰が下されますが、このお話はその兼山の娘 婉 の幽閉が解かれるところからはじまります。
父兼山は何代も後のことを考えた政治を行ったのに、無能な同僚に糾弾され、その死後には一族を幽閉するという罪で辱められ、男系が生き残るのを阻止されました。それほどまでに周囲を恐怖に陥れた兼山て一体・・・。
そして父親の政権争いにまきこまれて一生を台無しにされた子供達が哀れです。
絶望して次々に死んでいく兄弟たち。
政治の渦に流されるしかない人々。抵抗せず従うしかない女達。
「婉という女」では、与えられた境遇の中でじっと耐えることしかできず、己を抑えて生きることしかできなかった女 婉(えん)が、幽閉が解かれたことをきっかけに「生きよう」と決心し、自分の人生を築いていきくお話。ここに登場する女性は強いです。
「正妻」は、兼山の妻市(いち)が主人公。
正妻でありながら、夫婦の交わりを結ばずに終わった空しい女の一生です。
妾とその子供達は一族とみなされて幽閉されたのに、市は幽閉の人数にいれてもらえなかったかわいそうな人。
わしはこっちのお話のほうが面白かった。
三話はいってますが、どの話も兼山にまつわる女性の話です。
ここに登場する女性はみな弱く無力ですが、潔く凛とした印象があります。そして地を這ってでも生きていく根性がある。なんか読んでてすごいなぁ〜と感心しました。