<< 「わが子キリスト」 / 「本当はちがうんだ日記」 >>
「婉という女・正妻」
0

    この話、年代によって面白い面白くないが分かれると思いました。
    推奨は25歳以上くらいでヨロシク。

    江戸時代土佐藩で活躍した政治家野中兼山は、あまりにも苛烈な政治を行ったため周囲から糾弾され、自身の持病も重なって政界から追い出されるような形でしりぞきます。
    彼の死後、ライバル政治家達が兼山をおそれ、直系が途絶えるまで一族を幽閉するという沙汰が下されますが、このお話はその兼山の娘 婉 の幽閉が解かれるところからはじまります。
    父兼山は何代も後のことを考えた政治を行ったのに、無能な同僚に糾弾され、その死後には一族を幽閉するという罪で辱められ、男系が生き残るのを阻止されました。それほどまでに周囲を恐怖に陥れた兼山て一体・・・。
    そして父親の政権争いにまきこまれて一生を台無しにされた子供達が哀れです。
    絶望して次々に死んでいく兄弟たち。
    政治の渦に流されるしかない人々。抵抗せず従うしかない女達。

    「婉という女」では、与えられた境遇の中でじっと耐えることしかできず、己を抑えて生きることしかできなかった女 婉(えん)が、幽閉が解かれたことをきっかけに「生きよう」と決心し、自分の人生を築いていきくお話。ここに登場する女性は強いです。
    「正妻」は、兼山の妻市(いち)が主人公。
    正妻でありながら、夫婦の交わりを結ばずに終わった空しい女の一生です。
    妾とその子供達は一族とみなされて幽閉されたのに、市は幽閉の人数にいれてもらえなかったかわいそうな人。
    わしはこっちのお話のほうが面白かった。

    三話はいってますが、どの話も兼山にまつわる女性の話です。
    ここに登場する女性はみな弱く無力ですが、潔く凛とした印象があります。そして地を這ってでも生きていく根性がある。なんか読んでてすごいなぁ〜と感心しました。


    Check
    小説 * comments(4) * trackbacks(1) * - - * moji茶
    スポンサーサイト
    0
      Check
      - * - * - * - - * スポンサードリンク

      comment

      はじめまして。この本を読んでいる人を探し回って、たどり着きました。
      私は、小説の舞台「宿毛」に旅しまして、その記事を書きました。TBしたかったのですが、どうも不成功ですね。うちにもお出で下さい。25歳はとうの昔に過ぎてます。やはり。
      Bianca * 2007/04/21 3:17 PM
      はじめまして〜。記事拝見しました。
      宿毛へ行かれたのですね。
      野中家は学校になっているのか・・・。それはそれで投資志向の兼山の志にあっているかも。
      外界への希望を失って死んでいく兄弟が切ないです。人は希望を失うと死んでしまう生き物なんだ・・・!と思い切なかったです。

      コメントを残したかったんですが、メールアドレスのエラーで残せませんでした。こちらのTBはスパム防止がもしかしたら邪魔しているのかもしれません。
      スパム防止・・あまり意味がありませんね。
      moji茶 * 2007/04/21 10:12 PM
      文字茶さま、こんばんわ。こちらにTB成功してうれしいけど、うちにコメントを残せないのなぜでしょうね、ザンネンです。
      前回、書き忘れましたが、「正妻」も面白そうですね。どちらの家族も、まあ、犠牲者で、兼山だって、ある種の加害者ですよね。すべてが複雑に絡み合っていて、一概に断罪できないのがこの世の中・・・。はかなく死んでいった男性達、生き残る女性達、これは、現代日本でも、その通りですね。親戚を見渡しても、女子が生き残る・・私は、何を見ても、この状況でいかに生き延びるかと、無意識のうちに考えているようです。アウシュビッツでも「タイタニック」でも。まさに女子の鑑でしょうか。浅ましいなぁ。フフフ・・・・
      Bianca * 2007/04/23 1:14 AM
      生き残る・・・昔学校で戦争映画を見て、「女は戦争にいかなくていいんだ・・・ラッキー」と思った記憶があります。
      あさましさ100%ですYO!
      moji茶 * 2007/05/01 11:52 AM









      trackback

      ・・・ トラックバック機能は終了しました。
      宿毛(すくも)は高知県の西端の小さな町。 1971年今井正監督、岩下志麻主演で映画化された、大原富枝の 「婉(えん)という女」に描かれている、野中兼山一族の幽閉の地である。 江戸時代の信じがたい人権無視、家老として失脚した本人の死後に、 妻子が(乳幼児にいた
      〔旅〕宿毛(すくも) * しづのをだまき | 2007/04/21 3:13 PM