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「浮世の画家」
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    わし、しめっぽい話は嫌いなんですけど、この作家さんだけは不思議と読まされるというか・・・。
    すごくよかった。「日の名残り」もしめっぽくてよかったなあ。

    戦時中、日本精神を鼓舞する作風で名をなした画家の小野。多くの弟子に囲まれ、大いに尊敬を集める地位にあったが、終戦を迎えたとたん周囲の目は冷たくなった。弟子や義理の息子からはそしりを受け、末娘の縁談は進まない。小野は引退し、屋敷に篭りがちに。自分の画業のせいなのか…。老画家は過去を回想しながら、みずからが貫いてきた信念と新しい価値観のはざまに揺れる―ウィットブレッド賞に輝く著者の出世作。
    小野さんの一人称で語られる小説で、かなり高齢なのか、現在の出来事と過去の記憶とが入れ替わり立ち替わりで語られます。
    おじいちゃんもうボケてきたのかしらブルブル・・・
    そういえば「日の名残」もスティーブンス(高齢)の一人称で思い出系だった。きっとカズオ・イシグロ氏の得意の手法なんでしょうね。

    戦中・戦後でガラっと変わってしまった世の中。
    誇りをもって絵を描いてきた人生。弟子に囲まれた華やかな人生。大邸宅を譲り受けるに値する人物だった自分。
    それが、時代が変わるとあっという間に過去の栄光どころか忌まわしい過去になってしまう。
    自分がしてきたことを恥じてはいないけど、結果たくさんの人を戦場に導く役割の一端を担った事に罪の意識を感じる老後。
    なんだかすごく後ろめたい人生だ・・・。
    若い頃の彼は後ろめたいことはなく、ただ自分の才能を信じて常に前を向いてひたむきに進んでいただけなのに。光に満ちた道を歩いてきたはずなのに。それなのに、戦争が終わり日本が負けた途端、「罪」が彼にのしかかる。
    戦争に荷担した人間だということで後ろ指をさされる。

    おおう、おじいちゃん超かわいそう。
    でもそんな彼にも娘が二人。愛すべき孫が一人。ちょっと生意気な娘婿一人。
    その娘、紀子の縁談話がなかなかまとまらない、という話題を中心に、この小説は進行していきます。
    自分の過去を振り返る・旧友を思い出すきっかけが家族というのがなんだかいいなあ。
    娘婿のちょっとした態度に自分の過去を反芻してみたりするのもいい。

    イシグロ氏の小説は「仕事」と「家族」がテーマなんですかね。二作品読んだ中で共通します。
    「仕事」のほうは「プライド」とか「信じてきたもの」とか他にも言い方があるかな、と思います。
    その「仕事」を、「家族」によってゆさぶられる主人公。
    それを読んでいるわしも、彼らと一緒に「仕事」について考えたり、生き方を考えたりする。決してまとまることのない壮大なテーマなんですけど、読んでる間は主人公と同じように悶々と考えてしまう。
    でも、「家族」がいるから最後はすごく暖かく終われる。

    頑張った思い出があれば、それを糧に人は生きていけると思える本です。


    テーマ:カズオイシグロ
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