「半落ち」
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    横山 秀夫
    講談社
    ¥ 1,785
    (2002-09-05)

    病気の妻を殺した警察官梶聡一朗は、警察に自首するが、妻をころしてから自首するまでの数時間が謎のままである。
    妻に請われて殺したこと、どうやって殺したか、などは供述するものの、妻を殺してから自首するまでの空白の時間はどうしても供述しようとしない。
    犯行は認めるが、動機を自供しない、そのような状態を「半落ち」といいます。
    彼をとりまく刑事・検察官・裁判官・弁護士・新聞記者・刑務官が各章の主人公になり、梶を見守ってゆく、という設定ですが、ミステリーだと思って読むとかなりガッカリします。
    トリックとかアリバイ崩しとかありませんし、各章ごとの主人公達にも感情を入れにくいです。
    あれだけ沈黙をまもっておいて、その理由がアレかぁ・・・みたいなガッカリ感というか・・・。
    しかも各章ごとの主人公達の梶に対する調査や感情も中途半端のような気がして、どうにも共感しにくいお話でした。
    ただ、ミステリーではなく、ヒューマンドラマだと思って読めば泣きどころはあるし面白いと思います。どうしてミステリーに入っているほかが不思議な作品でした。

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    「ルパンの消息」
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      15年前のデビュー作を改稿して、新たな小説として登場した本です。
      横山秀夫といえば「泣かせる話」というイメージがあります。今回はどんな風に読者を泣かせてくれるのかな?と期待半分夢半分・・・。「クライマーズ・ハイ」と「出口のない海」は顔の穴という穴から水がでましたから。

      時効まで一日という設定が斬新でした。しかもあの大事件の容疑者なんかも出てくるし。でも今回は期待したほど泣けませんでした。淡々と供述の再現を通して謎が明かされていきます。
      ただ、話の展開はなかなか面白く、10年以上も前の犯罪を暴くための手がかりは参考人の供述だけというものでした。テンポもよく退屈はしません。
      登場人物は相変わらず横山調で熱い奴等だし。男の汗とか情とかそんなん大好きやDE!
      そして最後の最後に大どんでんがえし。今回はあまり泣かないかわりにとっておきのびっくりが用意されています!
      ああ・・・これで・・・解決かぁ〜よかったよかった・・・ってえええぇぇぇぇぇぇえええええ?みたいな。
      ちょっと寝る前に読んどこうと思ったわしは大失敗。最後が気になってとうとう夜更かししてしまいました。
      おかげで今日起きるのがめっさつらかったです。
      最後のどんでん返しからどたたたたたーっと話は畳み掛けるようにしておわります。ちょっと・・・あれだけ壮大にテーマを広げた割に終わり方はあっけなかったような気もしないでもないですが、あの四分の一からの大どんでん返しの衝撃を他の人にも味わってほしい。
      背筋が寒くなりますよ。

      以下はネタバレ


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      「クライマーズ・ハイ」
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        キタ━━(゜∀゜)━( ゜∀)━( ゜)━( )━( )━(゜ )━(∀゜ )━(゜∀゜)━━━!!!!
        すっごい当たりです!メチャ面白かった。

        御巣鷹山日航機墜落事故の全権デスクを任された悠木は、その日同じ社で違う課の安西という男と山に登る約束をしていた。
        しかし安西はおかしな消息を残したまま妻と子供を残して脳死。
        悠木は登山仲間を失った驚きと、全権デスクをまかされた緊張で戸惑いを感じつつも、事件の大きさに圧倒され、いつしか魅せられてゆく。
        ・・・というお話か?

        自分の仕事にプライドを持った男たちが本音でぶつかりあい、腹をさぐりあい、時には怒鳴りあいやあわや乱闘かと思われるほどに熱くなる。
        うおー!これが男の仕事かっ
        すげー汗臭いけどそこがまたいいです。
        高村薫の社会小説とは一風ちがい、こちらのほうがサラリーマン的で家庭的。泥臭い。
        ストイックさとか感じません。でも必死に仕事してるオヤジ臭にたまらなく萌え!
        ネタを抜くか抜かないかで営業の人間とやりあう臨場感緊迫感あふれる場面に、思わず自分もそこにいるかのように錯覚してしまいました。
        「パンパンの子」といわれた悠木が逆上してふりかえるシーンなんかは読んでいて鳥肌モノ。
        血走った悠木の目を実際に見た気がした。ていうか自分か悠木になった気でカッとなる。
        すごく入り込める作品でした。
        最後は「出口のない海」「半落ち」と同じで、ぐぁ〜〜〜〜!!っと泣かせる波がくるんですが、「半落ち」のようなベタさは感じず、思わず悠木をねぎらってやりたくなりました。
        自分のことをずるいやつ、孤独なやつ、と思っている悠木ですが、小説を読んでいるとわかるように面倒見がよく人を育てる才能があります。子供に気を使ってやって、数年前に死んだ部下のことをずっとひきずっている不器用で優しい人。主人公にとても好感が持てました。

        とても内容の濃い本でしたが、これって作者の実体験に基づいているんですね。
        納得。地方紙の苦労、苦悩がとても詳しくかかれていて、こういうのはやはり内部の人間じゃないと書けないよ。

        ***
        小説とは関係ないんですが、御巣鷹山に墜落する瞬間までのテープが一部ネットで公開されていますよね。わしは以前どこかのリンクをたどっていって聞いたのですが、機長さんたちの奮闘に思わず涙が出てしまいました。
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        「出口のない海」
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          横山 秀夫
          講談社
          ¥ 1,785
          (2004-08-06)

          人間魚雷とは、太平洋戦争末期日本軍が考え出した海の特攻兵器です。
          ぎりぎり人体が入るひろさの潜水艇で、敵艦目指してつっこんでゆく、悲惨な兵器です。
          その兵器に乗って散っていった青年が主人公。
          彼は野球選手として生きる人生があったはずなのに、それを無残にうばわれてしまいました。
          しかし彼は自分の不幸な人生を、その時代、その運命を懸命に生きて最後まで希望を失いませんでした。そんな彼の生き方に泣きます。

          魔球完成に命をかける野球一辺倒の彼が、軍隊に入るところから、彼の運命は変わりはじめます。
          とうとう彼も一軍人になってしまうのか・・・
          あまりにも軽く自分の命を捨ててしまう特務に参加してしまった主人公。
          決死ではなく、必死の特攻に困惑します。
          その先にあるのは死。寿命ではなく、近い将来かならず来る死。しかも、自分から進んで向かっていく。

          しかし、彼はあくまでも魔球の完成に希望をうしなわず、友人に生きることを教えてくれたのです。
          体は現世にしばられて魚雷にのっていても、彼の精神はどこまでも自由なのでした。
          ただひたすら、主人公に脱帽します。

          読後は、やはり主人公には野球人生をおくってほしかった・・と思いました。戦争って残酷です。


          タグ:出口のない海 横山秀夫 回天 人間魚雷
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