2012.03.03 Saturday
大金持ちのマラカイ・コンスタントが、運命に翻弄されつつも波瀾万丈な人生を全うしたお話。
この本をビレッジバンガードで購入したとき、確か宣伝キャプションが飾ってあって、「抱腹絶倒!」とか書いてあったような気がしたのは、私が夢でも見たのでしょうか・・・。
てっきり笑えるSFなんだと思って購入しましたが、まったく笑えませんでした(笑)。
ラムファードという、時空を行ったり来たりできる全知の男性が、コンスタントに彼の未来を告げる、というところから話が始まります。
最初は、ラムファードという男は人間なのに時空を行ったり来たりできるし、人の未来も知ってるし、神様か、神様の使者か何かかと思って読んでいました。
コンスタントが火星で酷い目に遭い、水星で過ごしているときも、これは神であるラムファードが導いていることなんだと思っていました。
コンスタントは火星に行った後、記憶を奪われ、友も故郷も覚えていない状態で懸命に数少ない自分の手がかりだけを頼りに生き抜こうとします。そして彼は、利用されただけの人生だったとしても、自分の人生を生き抜いたという実感を得ることが出来ました。親友の記憶も、故郷の記憶も、何も覚えていない男は、自分の死を穏やかに迎えます。
コンスタントの流転の人生は、大変読み応えがあり、一種の哲学的要素も感じられました。
でも、まさかそんなオチ!?(笑)
結局、一番憐れに感じたのは、コンスタントやビーやクロノ、地球人たちを導いてきたラムファード。
地球と火星との戦争を画策し、新しい宗教を設立し、妻と一度も共寝をせず、ただひたすら地球人の未来のためと信じて活動していたことが、実は一つの部品をとある星まで運びたいという異星人たちの計画の一端にしか過ぎなかったという酷い話。
そんな人生ってあるものか。と思いますが、それも人生。
最後は、この小説に出てきた人々の流転の人生をしみじみと思い返して余韻に浸れます。
ラスト、コンスタントがストーニィに会うシーンは、最初は「えぇ・・・」と物足りない感じがしましたが、読後から間が開くと、あれでよかったんだと思います。
やはり、天にいるだれかさんは、彼が気に入ってるんですね(笑)。
タグ:タイタンの妖女 カート・ヴォネガット・ジュニア ハヤカワ文庫 SF