「わたしを離さないで」
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    カズオ イシグロ
    早川書房
    ¥ 1,890
    (2006-04-22)
    Amazonおすすめ度:

    「提供者」という設定が衝撃的。あと何年かしたら現実に議論検討がなされていくような気がして怖い。
    4度目の提供で人生を全うするなんて悲しすぎる。主人公の人生も切なすぎる。

    この人の本は読んだ後にドスーンと衝撃が来るので、読後もずるずる世界観を引きずってしまう(笑)。電車の行き帰りとかに小説の内容を反芻して余韻を楽んでます。

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    「遠い山なみの光」
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      カズオ イシグロ
      早川書房
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      (2001-09)
      Amazonおすすめ度:

      めちゃ暗い話(汗)。長崎に原爆が落ちて何もかも失った戦後の暗い時代を生きた女性の回想録。え、万里子はクビをつったの?なんで悦子さんは縄をもってたの?あそこのシーンだけ「ひぐらし」みたいで怖かったです(汗)。佐知子の生き方も浅はかだ・・・・。
      現代になってイギリスに住んでるシーンになっても長女がクビつってるし(汗)。暗い。暗すぎる。
      二郎となんで別れたんだとか些末なことが気になります。

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      「浮世の画家」
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        わし、しめっぽい話は嫌いなんですけど、この作家さんだけは不思議と読まされるというか・・・。
        すごくよかった。「日の名残り」もしめっぽくてよかったなあ。

        戦時中、日本精神を鼓舞する作風で名をなした画家の小野。多くの弟子に囲まれ、大いに尊敬を集める地位にあったが、終戦を迎えたとたん周囲の目は冷たくなった。弟子や義理の息子からはそしりを受け、末娘の縁談は進まない。小野は引退し、屋敷に篭りがちに。自分の画業のせいなのか…。老画家は過去を回想しながら、みずからが貫いてきた信念と新しい価値観のはざまに揺れる―ウィットブレッド賞に輝く著者の出世作。
        小野さんの一人称で語られる小説で、かなり高齢なのか、現在の出来事と過去の記憶とが入れ替わり立ち替わりで語られます。
        おじいちゃんもうボケてきたのかしらブルブル・・・
        そういえば「日の名残」もスティーブンス(高齢)の一人称で思い出系だった。きっとカズオ・イシグロ氏の得意の手法なんでしょうね。

        戦中・戦後でガラっと変わってしまった世の中。
        誇りをもって絵を描いてきた人生。弟子に囲まれた華やかな人生。大邸宅を譲り受けるに値する人物だった自分。
        それが、時代が変わるとあっという間に過去の栄光どころか忌まわしい過去になってしまう。
        自分がしてきたことを恥じてはいないけど、結果たくさんの人を戦場に導く役割の一端を担った事に罪の意識を感じる老後。
        なんだかすごく後ろめたい人生だ・・・。
        若い頃の彼は後ろめたいことはなく、ただ自分の才能を信じて常に前を向いてひたむきに進んでいただけなのに。光に満ちた道を歩いてきたはずなのに。それなのに、戦争が終わり日本が負けた途端、「罪」が彼にのしかかる。
        戦争に荷担した人間だということで後ろ指をさされる。

        おおう、おじいちゃん超かわいそう。
        でもそんな彼にも娘が二人。愛すべき孫が一人。ちょっと生意気な娘婿一人。
        その娘、紀子の縁談話がなかなかまとまらない、という話題を中心に、この小説は進行していきます。
        自分の過去を振り返る・旧友を思い出すきっかけが家族というのがなんだかいいなあ。
        娘婿のちょっとした態度に自分の過去を反芻してみたりするのもいい。

        イシグロ氏の小説は「仕事」と「家族」がテーマなんですかね。二作品読んだ中で共通します。
        「仕事」のほうは「プライド」とか「信じてきたもの」とか他にも言い方があるかな、と思います。
        その「仕事」を、「家族」によってゆさぶられる主人公。
        それを読んでいるわしも、彼らと一緒に「仕事」について考えたり、生き方を考えたりする。決してまとまることのない壮大なテーマなんですけど、読んでる間は主人公と同じように悶々と考えてしまう。
        でも、「家族」がいるから最後はすごく暖かく終われる。

        頑張った思い出があれば、それを糧に人は生きていけると思える本です。


        テーマ:カズオイシグロ
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        「日の名残り」
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          日の名残り
          日の名残り
          posted with 簡単リンクくん at 2007. 2.16
          カズオ・イシグロ著 / 土屋 政雄訳
          早川書房 (2001.5)
          通常2-3日以内に発送します。

          これって悲しい話?いい話?
          わしはすごく読んでいて悲しかった。スティーブンスが不器用すぎて、読んでいてすごくかわいそうでした。
          品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。

          ご主人様のフォードを借りて一週間ほどの旅行に出発するスティーブンスは、景色よりも過去の思い出にひたってばかり。ずっと思い出話が続きます。それは決して退屈な話ではなく、歴史の一部をうごかさんばかりの勢いをもったダーリントンホールでの思い出。
          物腰穏やかで丁寧なスティーブンの言葉使いは、読んでいて心地よいです。
          自分の執事人生に誇りを持っていることと、前の主人ダーリントン卿をとても尊敬していることが伝わってきて、その一徹な執事人生に関心します。自分のやってきたことに何の疑いもない、という誇りと品格。執事ってすごいなあ・・・・。
          でも彼の語る話からは、彼の不器用な一面もうかがうことができて、脆さにも気づかされます。肝心の語り手であるスティーブンはそんな自分には気づいていないよう・・・?執事業に徹するあまり、同じ建物の中にいる父親の死に目にあえず、自分の恋心にもほとんど無関心です。大切なことがカラッポだYO!!
          今の時代の人間からしたら、執事業よりももっと親の死に感情を動かされてみろよ、とか、そこでミス・ケントンの誘いにのっておけよ!お前一生独身か?とかイロイロ突っ込みたいところ。
          読者のほうがヤキモキさせられます。
          でも彼は執事の使命と誇りをもってそんなことには感情を動かされまい、仕事に忠実であろうとします。そこがまたわしから見たらイタイ・・・。
          たった6日間の旅ですが、そうやって過去を思い出すうちに、最後には全然しらないおじさんにやっと本当の自分を吐露したりする。気づいていたのか。気づかないフリをして生きてきたのか。
          このシーンは結構感動。
          「卿は勇気のある方でした。人生で一つの道を選ばれました。それは過てる道でございましたが、しかし、卿はそれをご自分の意思でお選びになったのです。少なくとも、選ぶことをなさいました。しかし、私は・・・・・・私はそれだけのこともしておりません。私は選ばずに、信じたのです。私は卿の賢明な判断を信じました。卿のお仕えした何十年という間、私は自分が価値あることをしていると信じていただけなのです。自分の意思で過ちをおかしたとさえ言えません。そんな私のどこに品格などがございましょうか?」
          ずっと執事人生をたどってきた後にこの台詞。あれだけの誇りと自負をもってやってきた執事業でしたが、とうとうダムが決壊。スティーブンスの心に穴がぽっかり開いていた様がひしひしと伝わってきて、泣けます。
          この人はずっとずっと一人ぼっちだったんだよ。自己完結の悲しい人だよ。
          なんて悲しい話!!!と悲嘆にくれるのもつかの間、知らないおじさんはスティーブンスに
          アドバイスをくれるのです。おじさんの穏やか台詞に感動・・・。
          夕方は、日が沈む悲しい時間だとばかり思っていたけど、脚をのばしてのんびりする、一日でいちばんいい日だとおじさんはいいます。わしはこのおじさんの言葉に目からうろこ。そうかあ。夕方はホっとできる一番いい時間なんだ・・・。
          スティーブンスじゃないけどなんか元気付けられた感。
          スティーブンスはいつもの日常にもどり、執事として新しい主人のためにアメリカンジョークの研究に余念がありません。すっごくさぶいギャグしか言えてませんが・・・。それでも以前の悲しいスティーブンスではないと思いました。
          一徹で、不器用で、寂しい人だけど、ちょっぴりチャーミングな洗練された紳士。
          スティーブンス。
          なんか、読んでよかったなあ。「ありがとう」と言いたい。
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